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変形性膝関節症 へんけいせいひざかんせつしょう
-症状-
動きはじめや立ち上がり、階段の上り下りで膝が痛むようになります。
- しゃがみ込みや正座など膝を深く曲げることがつらい
- まっすぐに伸ばすことができない
- 膝に水がたまることで腫れる
- 膝が変形してO脚になる
などの症状があります。
-原因・病態-
正常の膝関節は関節の表面を覆っている軟骨があり、骨同士がぶつかり合わないようクッションの役割をしています。変形性膝関節症は、軟骨がすり減り、関節炎や変形を生じることで痛みがある状態です。
原因は1つではなく、膝のけがや病気、加齢や体重増加などが要因になることがあります。
-治療-
まずは保存療法で進行をおさえ、症状の改善を図ります。
- 体重をコントロール(減量)し、運動の見直しで膝への負担を軽減します。自転車こぎや水中歩行は、膝に負担をかけずに柔軟性や筋力アップに効果があるため、おすすめです。
- ふとももの前の筋肉、股関節の外側の筋肉を鍛えることは、痛みの軽減に効果があります。
- ホットパックや電気刺激などのリハビリテーションをします。
- サポーターや足底板を用いて、膝の安定や負担軽減を図ります。
- 痛みを軽減させる内服や外用剤(湿布・塗り薬)を使用します。近年は、より効果の高い薬剤を選択することができるようになっています。
- ヒアルロン酸の関節内注射は、関節液を正常なはたらきに近づけ、膝の痛みの軽減し炎症をやわらげる効果があります。週に1回を5週間程度続け、その後は症状に応じて継続することもあります。
上記の保存治療を、症状の程度に応じて組み合わせて行います。保存治療を行っても十分な効果が得られないときは、手術(関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工関節置換術)を選択することもあります。提携先病院を中心に、十分な手術実績のある高次医療機関の医師をご紹介いたします。
-よくある質問-
- Q. 水がたまったら抜かないといけませんか?
- A. 必ずしも抜く必要はありませんが、多量にたまって膝関節の動きが低下したり痛みの原因になっているときは、水を抜く必要があります。
- Q. 水を抜くと癖になるのですか?
- A. 水を抜いても癖になることはありません。抜いてもすぐに水がたまるのは、膝の炎症が持続しているためです。治療により炎症が治まれば、水はたまらなくなります。
- Q. サプリメントで軟骨が再生するのですか?
- A. 今のところそのような効果は明らかにされていません。
- Q. 膝は温めたほうがいいのですか?
- A. 基本的には、入浴やひざ掛けの使用などで温めたほうが痛みが軽くなります。運動の後など熱感が強い場合は、氷嚢などで冷やしてください。
オスグッドシュラッター病
-症状-
小学高学年から中学の発育期にある子供の、下腿近位の骨(脛骨粗面 けいこつそめん)が徐々に突出して、痛みを生じてくるものをいいます。時に赤くはれたり、熱をもったりします。
ジャンプやボールを蹴るスポーツ等で、動作を繰り返すことで生じてきます。休んでいると痛みがなくなりますが、スポーツを始めると痛みが再発します。
急激に身長が増加する成長期に特徴的な疾患です。症状とレントゲン検査により診断します。
-原因・病態-
大腿の前の筋肉(大腿四頭筋)の力は、膝蓋骨(しつがいこつ)を介して膝を伸展させる力として働きます。
ジャンプやキック動作により膝を伸ばす力が繰り返し加わり、大腿四頭筋が膝蓋腱を介してその付着部(脛骨粗面)をけん引するために、脛骨粗面の成長線に過剰な負荷がかかり成長軟骨部が剥離することで生じます。
-治療-
成長期の一過性の病気で、成長が終了すると多くは治癒します。
症状を強くさせないためには、大腿四頭筋を伸ばすストレッチや痛いところのアイスマッサージなどを行います。痛みが強いときのみ、薬を飲んだり湿布をします。
痛みがなくなればスポーツ復帰が可能ですが、3-6か月はスポーツをすると症状が強くなるので、前後にストレッチやアイスマッサージ、ベルトを装着した上でのスポーツをすることをお勧めします。
膝前十字靭帯損傷 ひざぜんじゅうじじんたいそんしょう
-症状-
前十字靭帯は、大腿骨と脛骨を膝関節の中で結ぶ強固な靭帯です。主に脛骨の前方移動を抑制し、膝関節の安定を保つ重要な役割をはたしています。
前十字靭帯は主にスポーツの際に、損傷することがしられています。
受傷した瞬間に、断裂の音(ポップ音)が聞こえることが多く、脱臼感(『外れた』感じ)を自覚します。受傷直後は立位歩行が不能になることが多く、受傷後12時間以内に関節の腫れを生じ、病院で膝の穿刺をすると血種が引けます。
急性期をすぎると、膝の曲げ伸ばしや荷重歩行はできるようになりますが、膝のずれる感じ(膝くずれ)を自覚したり、合併した半月板損傷のために痛みや引っかかり感を自覚します。
-原因・病態-
柔道やラグビーなどのコンタクトスポーツにおいて、相手選手と接触して膝を外反強制したり(接触型損傷)、バレーボール等におけるジャンプの着地やバスケットボール等での急な方向転換で膝を捻って受傷(非接触型損傷)します。
診断は、受傷機転の問診、徒手的な検査、さらにMRIにより行います。
-治療-
断裂した前十字靭帯が自然修復することは稀であり、ほとんどの方が前十字靭帯不全・欠損膝と呼ばれる不安定な膝となります。スポーツ活動に支障をきたすばかりか、放置すると半月板損傷・関節軟骨損傷へと進行し、早期に変形性膝関節症になることも多いです。
スポーツ等で膝を傷めたら、捻挫で済ませずに整形外科の専門医の診察を受けることが大切です。
急性期においては、ギプスなどの外固定は行わず、可動域訓練を行い膝機能の回復・筋力低下の防止に努めます。
前述した通り、断裂した前十字靭帯はそのままでは癒合(自然治癒)しないことがほとんどです。受傷後1か月ほどで痛みがとれ、日常生活には支障がなくなることがほとんどですが、それは断裂に伴う炎症が落ち着いたのにすぎず、靭帯は切れたままです。
膝くずれ等の不安定感がある方、今後ジャンプや全力走などを含むスポーツ活動をする方は、靭帯を再建する手術を検討します。提携先病院を中心に、十分な手術実績のある高次医療機関をご紹介いたします。
膝半月板損傷 ひざはんげつばんそんしょう
-症状-
半月板は膝関節の内側・外側にある三日月型をした軟骨様の組織で、荷重の分散、関節の安定化、クッション材としての役割をはたしています。
半月板の損傷に伴い、荷重歩行の際に痛みを感じたり、膝の曲げ伸ばしなどの動作でひっかかりを起こす場合があります。半月板が挟まりこんで膝が屈伸できなくなる「ロッキング症状」を起こすと、痛みで歩けなくなるなど生活に支障がでます。
-原因・病態-
若い人では、スポーツや仕事において、ジャンプからの着地や切り返し動作で膝を捻って受傷します。前十字靭帯など他の靭帯損傷に合併して損傷することもあります。
高齢者では、加齢により傷つきやすくなっている半月に軽微な外力が加わって損傷します。
診断には、問診・身体所見に加えて、MRIを撮影して判断します。
原因が様々であるため、損傷の形も、縦断裂・横断裂・水平断裂・変性断裂など様々です。
-治療-
治療は、保存療法と手術療法に分けられます。
半月板実質は血流に乏しく、断裂を起こすと自然治癒しにくいことが知られています。
急性期においては、ギプスなどの外固定は行わず、可動域訓練を行い膝機能の回復・筋力低下の防止に努めます。
痛みが主症状で、曲げ伸ばしの制限や日常生活での支障がそれほど強くない場合は、保存療法を行います。膝周囲の筋力訓練や関節内注射を行います。
ロッキングにより関節可動性が損なわれたり、引っかかりの頻度が高い場合・疼痛による日常生活動作の制限がある場合には、手術を検討します。断裂の形態や、年齢、活動度に応じて、半月板の縫合あるいは部分切除を、関節鏡という内視鏡を用いて行います。提携先病院を中心に、十分な手術実績のある高次医療機関をご紹介いたします。
小児単純性股関節炎 しょうにたんじゅんせいこかんせつえん
-症状-
何の誘因もなく急に股関節の痛みを生じ、歩行困難になることもあります。ときにかぜ様症状が前駆症状として出ることもあります。5-6歳児に多く発症します。全身的な発熱はあってもごく軽度なことが多く、股関節の熱感や腫脹はみられません。
-原因・病態-
ウイルス感染が原因ではないかと考えられていますが、原因ウイルスは同定されておらず未だ不明です。股関節に一過性に炎症が起こって水がたまる、股関節の風邪のような病気といえます。
レントゲンを撮影して、形態的な異常や骨質の変化の有無の他、関節液の貯留による骨頭の側方化がみられないか調べます。超音波検査を左右の股関節に行い、関節水腫(関節液の増加)を調べます。
全身の高い発熱や、局所の腫脹・熱感がみられる場合は、他の疾患(化膿性股関節炎)が疑われるため血液検査などの検査が必要になります。
-治療-
安静(運動制限)にて数日から1週間程で自然治癒することがほとんどで、とくに関節穿刺や内服薬は必要としません。ほとんどのケースで、症状の消退とともに何ら後遺症は残しません。
運動制限を行っても強い痛みが続いたり1週間以上症状が改善しない場合は、入院して牽引治療を行うことがあります(提携先の病院をご紹介いたします)。また、再発を短期間で繰り返す場合や、1か月しても症状の消失がない場合には、他の疾患の可能性を念頭にレントゲンの再検査やMRIによる詳しい検査が必要となります。
鵞足炎 がそくえん
-症状-
鵞足(がそく)は膝の内下方(脛骨粗面(けいこつそめん)の膝蓋腱(しつがいけん)付着部から2横指遠位の内側)にあり、縫工筋(ほうこうきん)・薄筋(はっきん)・半腱様筋(はんけんようきん)のそれぞれの停止部が共通腱となって脛骨に付着する部位の名称です。
鵞足にある筋腱および滑液包に炎症が生じ、立ち上がり動作・階段昇降動作・ランニングや各種スポーツ動作(ラグビー、サッカー、アメリカンフットボールなど横方向の動きが要求される種目)などで膝内側の痛みを引き起こします。
-原因・病態-
鵞足筋腱とその下層にある滑液包への、繰り返される引っ張り・摩擦(まさつ)ストレスが原因となります。
スポーツ愛好者・肥満傾向にある中年女性・ハムストリング(大腿後面の筋肉)の柔軟性に乏しい方に好発します。
膝関節の外反・下腿の外旋など、下肢のアライメント異常も、誘因となることがあります。
-治療-
- 消炎鎮痛の外用剤や、痛みが強い場合は内服薬の処方を行います。
- ステロイドを含む局所麻酔薬の局所注射は診断手段としても治療手段としても有用です。当院ではエコーを使用して安全確実な注射を行っています。
- ハムストリングの緩やかなストレッチングを行います。
- 疼痛が改善しても1ヶ月程度は過度な運動などの負荷を控えたほうが良いでしょう。
- 下肢アライメントの異常により鵞足炎が出現している場合は、足底挿板の使用も検討します。当院では、義肢装具士によるインソールの作成を行っております(義肢装具士は、義肢及び装具の装着部位の採寸・採型、製作及び身体への適合を行うことのできる国家資格です)。
腸脛靭帯炎(ランナー膝) ちょうけいじんたいえん(らんなーひざ)
-症状-
階段昇降やランニングの際に、大腿骨外側上顆部(膝の外側)に痛みを感じます。同部位を押すと痛みが誘発されます。ランニングでは特に後半に、下り坂で痛みが強くなることがあります。
初期には、ランニングの休止により治まりますが、休まずに無理して継続していると、痛みのため膝の屈伸ができなくなります。
-原因・病態-
腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)は腸骨から脛骨に至る靭帯で、膝の屈伸時に大腿骨外側上顆の上を前後に移動します。長距離のランニングやサイクリングの様に膝の屈伸を繰り返す運動により、この部位に機械的な刺激(過度の摩擦)が生じ、炎症をもたらします。特に長距離ランナーに多く、代表的なランニング障害の一つといえます。
内反膝(いわゆるO脚)や、下腿内旋などのアライメント不良が発症の一要因となります。ハイアーチ等の足部の形態によって、下肢のアライメントがtoe in – knee outになり、膝関節の内反・下腿内旋がおこることで腸脛靭帯の伸張が起こります。シューズやサーフェイス(地面)の状態も発症に関係があり、クッション性の悪いシューズや、外側がすり減ったシューズを続けて使用していると、腸脛靭帯に衝撃・緊張が加わりやすくなります。
路肩など路面が斜めに傾いた道路では、低い方の下肢の腸脛靭帯に緊張が加わりやすくなります。ウォームアップ不足も、腸脛靭帯の柔軟性が低下しているため要注意です。
-治療-
痛みを軽減させるとともに、発症の要因に対するアプローチ・改善が治療の原則です。
ストレッチングが有効で、運動前に腸脛靭帯のストレッチングを入念に行います。炎症が強い運動後には、疼痛のある部位のアイシングを行います。慢性化している場合には、ストレッチ前に温めると効果的です。痛みが強い場合には消炎鎮痛剤の内服や外用剤に加え、ステロイドの局所注射を行うこともありますが、期間・回数を限定し、反復して使用することは避けます。
発症の明らかな要因を検討し、それを排除します(傾いた路面でランニングしている場合は走る場所を変更する、シューズの摩耗やクッション性を確認する)。